6月26日にコンペの審査が無事に終わりました。最優秀賞となる隈研吾賞に選ばれたのは、審査員の間で「もち(餅)」というニックネームが付けられた、柔らかい布と木のフレームを組み合わせた杉原有香さん(21-0133)の作品です。底面の布が色々な地形に対応でき、緑の斜面にも窪地にも、ザラザラした岩があるところにも、この上にふわっと座ることができます。この作品は、色々な作品の中でも一番「東川」という場所を意識したものだと思います。地域に対してどういう提案ができるか、地域からどのようなものを引き出してくれるか、このコンペで重要にしていることに対して、一つのチャレンジングな提案だったと思います。同時に「KAGU」と謳うコンペに際し、単なる家具のコンペを超え、より空間的で宇宙に繋がるようなものであり、審査員の夢に対しても応えるものがあった提案だったと思います。
優秀賞に選ばれたのは3作品です。柳澤星良さん(21-0909)の作品は、造形的にも非常に綺麗で完成度が高く、しかも「かしめる構造」という家具の世界においても大変に珍しい技術を用いたものであり、形態だけではなく技術的なことも非常に工夫がある提案ということで評価が高かったものです。
アンナ・ブガエウァさん(21-1331)の作品は、「折り紙的な形態」ですが、折り紙の形態が単なる形態的な面白さだけではなく、完全にフラットにすることができます。完全に一枚の板にすることができ、それを立体的に立ち上げるとカチッと固まるというような、技術的にも非常に面白い提案が含まれているものでした。
カタリーナ・ボギチェヴィッチさん(21-0347)は、曲木の美しいカーブを使った作品です。ロッキングして、自然の中で自分の体を自由に動かすことができるという、自然を意識しながらのデザインであり、今回の東川という場所のコンペに合った提案だと思います。
審査会では非常に面白い議論ができました。色々なバックグラウンドからの審査員の意見や、単に議論するだけではなく議論がクロスしたり、大きな社会的な問題、大きなデザインの世界の課題というものにも触れていて、ある意味でとてもスリリングな議論をみんなで楽しむことができました。第1回のコンペでこのような4つの作品が選べたことは、私にとっても今後に繋がる非常に良い結果だったと思います。
令和3年6月26日